『男はつらいよ お帰り 寅さん』を観て桑田佳祐氏への魔法がとけてしまった

シリーズ50周年記念作品であり通算第50作目の作品。本来の主演である渥美清さんが亡くなられた今、新作を出すことはとても難しいことで、長く続いた人気シリーズをどういう形で着地させるのかに期待して観ていた。

冒頭は吉岡秀隆さんが演じる甥っ子の諏訪満男が夢からさめるところから始まる、ファンお馴染みの展開だった。

夢だったことを悔やむ満男の表情がアップになってしばらくしたときにオープニングテーマが流れた。導入としては完璧で、早くも泣きそうになりうるうるとしてきた。

ところが最初の口上から渥美清さんの声ではなく、誰か知らないおじさんの声で驚いた。そのまましばらくするとなんとサザンオールスターズの桑田佳祐氏が歌い始めたのである。

日本映画史に残るメロディが流れたあと、渥美清さんの口上、歌、映像を待ち望んでいた自分がいて(何十作もそう観てきたので)期待していたそれではないものが流れた瞬間

「うわっ…桑田佳祐ってあんまり上手くないんやな…」と両者を比較してしまったのである。

うちの父親がサザンオールスターズのファンだったこともあり、幼少期からサザンの曲を聴いていた。学校では浜崎あゆみやモーニング娘。が流行っていたころにビートルズとサザンを聴いていた自分は仲間に入れなかった記憶がある。それでもミリオンヒットの名曲揃いで好きだったのだ。

ところが自分の好きな映画のシリーズ集大成で、それまでの作品にはほとんど関係のなかった桑田氏が何の脈絡もなく登場し、さらに同曲で比較した時に長年自分にかかっていサザンの桑田佳祐氏の歌が上手いという魔法が一瞬でとけてしまったのだ。(ライブではかっこいいのに…)

・・・今回はとんでもない体験をしてしまった。

また桑田氏の歌い方と衣装が桑田佳祐のモノマネをするそっくりさん、といった感じなのでそれも困った。衣装も上下は合わせてはいるが中には紫のシャツを着ており、寅さんに近づけたかったのかどうなのかなんとも中途半端であった。

https://tower.jp/article/news/2019/02/21/tg003より引用

(気になった方は本編を・・・)

とにかく自分が感じた違和感は相当なもので映画の中に突然缶コーヒーのCMが流れたような強烈なものだった。オープニングの最後は寅さんと桑田氏が一緒に口上をするという演出となっていたのだが、合成が安っぽく映り、どこか遊園地の映像合成クオリティ…

さらに桑田氏が口上の際に体を大げさにゆするもんだからさらにモノマネ芸の様相を呈していたのだった。あまりのオープニングに桑田氏は何がしたかったのかと考えたが、どうやらオファーをしたのは山田洋次監督だったという記事をみたので、桑田氏には罪はないと自分に言い聞かせここに書くことによってこの気持ちを消化し成仏させた。

桑田佳祐という人と渥美清さんは、心情において深く重なっているのではないか、と前々から思っていて『男はつらいよ』の50作目を作るなら、なんとかして桑田君に主題歌を歌ってもらいたいと強く願って直接に手紙を書きました。いわばラブレターです。その承諾の返事を聞いたときは本当に嬉しかった。桑田君が歌う「男はつらいよ」は、人を優しい気持ちにさせ、元気づけてくれる。「まあ、こんな私でもなんとか生きていけるんじゃないかな」観客の背中をポンと押してくれるような素晴らしい主題歌となり、記念すべき50作目のオープニングを飾るに相応しい名シーンとなりました。

https://www.cinemaclassics.jp/tora-san/movie50/themesong/より引用

上記の引用文が山田洋次監督の気持ちのようだが、全作品を通して渥美清氏から桑田氏を連想したことなど一度もなく、この監督のコメントに50作品の集大成として作品を観た自分は少し悲しくなってしまった。

寅さんおかえりなさいというか、なんというか・・・

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